【MeeGo】【N9】Nokia MeeGoの濃ゆーい話 その7【最終章】

このブログ異例の長期連載となったTasukumuro.comのThe story of Nokia MeeGoの翻訳も今回でついに最終回です。今回はMeeGo開発を引き継ぐNokiaの元従業員による新たな挑戦、フィンランドの携帯電話ベンチャーJollaの現状とこれまでのレポートの総まとめとも言える総論です。

それでは”MeeGo最終章”普通だ(><)をどうぞ。 JollaはNokiaのMeeGo開発を継続する。

フィンランドのJolla Ltd…はNokiaの元MeeGo開発者によって設立された。2012年7月から、Twitterで段階的に情報を公開してきた。会社としては、現在60人の従業員がおり、Nokiaが放棄したMeeGoオペレーティングシステムとスマートフォンの開発を継続している。
PRMパッケージを使うMeeGoベースのオペレーティングシステムはコードネームSailfishといい、Jollaはデバイス製造会社に2013年の春にライセンスを行う。Sailfish OSはQtとMerコアによるオープンソースプロジェクトによって構築されていて、スマートフォン、タブレット、テレビその他のデバイスの用途に使われる。

Jollaは開発したユーザインターフェイスを11月21-22日に行われるSlushイベントで公開する。Jollaはまた、Sailfish オペレーティングシステムのSDKの配布も行う予定だ。Jollaはクリスマス前にSailfishデバイスの情報や発売時期を明らかにするつもりだ。

Jollaのプレスリリースによると、彼らは半導体製造業者やOEM、ODM製造業者、携帯電話事業者、小売りを含むパートナーを求めている。彼らはまた、Sailfish オペレーティングシステム廻りのエコシステムを構築する為に約2億ユーロの資金を調達した。これらのことは中国で起こるモバイル市場の大きな変化を信じる香港の会社によって管理が行われる。

総論

インタビューを行った殆ど全ての現役もしくは元従業員はあらゆる衝突を繰り返し歩んできたにも係わらず、MaemoとMeeGoチームの仕事を過剰なまでに賞賛した。

Harmattanにはどのような製品を造るか、明確な展望が無かった。異なるプロダクトマネージャがどこに向かうべきか完全に異なった意見を持っていた。プロジェクトには、一人の人間が製品レベルの決断を出来るようなものは一つもなかった。多くの外注業者や全部の社員が、彼らが何を出来るかさえも分からずに雇われていた。組織はすぐに巨大なものに成長した。

Harmattanのユーザインターフェイスデザインはそれがどんな種類のデバイスに使われるか知らないままに設計された。ユーザインターフェイスは最終的に2度も設計し直され、2年が費やされた。UIの設計中、ColumbusとDaliの2台のデバイスが葬られた。最終的な結果としてSwipe UIとN9は成功した組み合わせとなったが、TI OMAP 3 SoCはN9の出荷時期には古びてしまうと考えられ、期待されるLTEのサポートもなかった。

2009年の初めMeeGoは新しいSymbianとなった。可能な限りのリソースや人員が与えられた。新しく従業員になったものは特定の仕事が与えられず、長期に渡って組織の中の適正な居場所を探すことになった。組織には役職がどんどん増えていった。彼らはプロジェクトの前進や完成を助ける事は本当に無かった。Nokia内部の全ての人がMeeGoについての意見を持っており、MeeGoチームは全ての意見に耳を傾けた。

IntelをOS開発とハードウェア供給のパートナーとして選んだのは恐らく最大の誤りだった。IntelはX86ベースのAtom SoCsを数年に渡り開発して来たが、今年になって初めてX86-ベースのスマートフォンを消費者に届けられただけである。現在に至ってもIntelは供給すべきLTEベースバンドチップを持っておらず、2013年までこの状況は続くと見られている。更にIntelは低価格のAndroidスマートフォンに対抗する低価格もしくは中間価格帯のAtom SoCチップを持っていない。

NokiaがHarmattanとMeeGoの開発に苦しみもがいている間、最悪の競争相手であるAppleやGoogleが彼らのオペレーティングシステム廻りのエコシステム構築に成功し、北米市場を奪い取っていった。Nokiaは他の製造業者をMeeGoエコシステムの開発に組み入れようと試みた。しかしながら、この誘いに興味を示すものは無く、Nokiaは一人取り残された。エコシステムの戦いにおいて、LTEのサポート無しに北米に参入するのは、他の製造業者や携帯電話事業者の適切なサポートが行われている中、Nokiaにとって達成不可能なことに思えた。

AppleのiOSはクローズドなプラットフォームであり、GoogleはNokiaがAndroidプラットフォームに参加する事に対してなんの利点ももたらさない。NokiaはStephen Elopの指揮の下Windows Phoneを新たなスマートフォン戦略に選び、Microsoftとの戦略的協業を開始した。現在NokiaはWindows Phone8を手中にして、チップは全てテーブルの上にある:オールインワンだ。(注:オールインワンはカジノ用語でプレイヤーが手持ちのチップを全てポットに入れた状態。最後の勝負の意味でしょう。)

Jollaの発表があった時、正直感じた事はこの会社の行く末は決して良いものでは無いだろうなと言う事でした。現在、旧大手5社とも言えた存在はSamsungを除きどこも苦しい状況です。Nokia、Motorola Mobility、Sony Mobile共に多額の赤字を計上し、会社の経営に苦しんでいます。今やAppleの様な一部の企業を除けばOSはOEMの時代。この水平産業下とも言える時代に於いてMotorolaにしろ、Sonyにしろ四半期のスマートフォンの出荷台数は4、500万台、SymbianとWindows Phone8の端境期であるもののNokiaもついに1,000万台を大きく割り込みました。スマートフォン製造と言う産業は数百万台クラブでは収益が上げ難くなっているのです。
この状況下に於いて、たった従業員60人のこの会社はOSの開発から端末製造、マーケティングに至るまで全てを行おうとしています。正にドン・キホーテの戦いであり前途は多難に思われます。
しかしながらこの会社は中国の大手小売りとの契約を勝ち取り、香港の投資会社を通じて200億円もの資金を調達することに成功し、意外にもしたたかな面を見せています。中国に注力したビジネスモデル、これが今後どのような展開を見せるかは分かりませんが、オープンソースプロジェクトの協力を得ながらOSを他社にライセンスし、仲間を増やしながら会社をコンパクトに保っていけば今までの大手携帯電話会社と違った生き残りの方向を見つけられるかも知れません。
Jollaが一番良かったと思う事は、長年Nokiaが積み上げて来たmobile Linuxの技術が分散しないと言う事です。一度、壊れてしまったものは2度と戻ってきません。JollaにはMeeGoの旗を掲げ続け、独立を保てるよう頑張ってもらう事を切に期待しています。

そして、今回のThe Story of Nokia MeeGo、主にMeeGo開発に関わったNokiaの現役、元従業員の聞き取りによって記事が成立しています。MeeGoの誕生は凄まじい熱狂を持って迎えられました。にも関わらず、なぜNokiaのスマートフォン戦略は失敗したのか、なぜMeeGoプロジェクトは失敗したのか、これらの本当の理由を導きだす為にはNokia MeeGoチームの証言だけではなく、当時のNokia上層部、Intelの開発者やMeeGoのソフトウェアやアプリケーション開発者、オペレータ、他の製造業者など多くの関係者から意見を聞き、もっと客観的な検証をする必要があるのかも知れません。
しかし、このレポートが現在最も詳しいNokia MeeGoの内幕を描き出している事も確かであって、貴重な資料であり、ここにはNokiaのMobile Linux開発に関わった多くの人のドラマがあります。
取材を重ねこの様な貴重な資料を公開してくれたSampsa Kurri氏に感謝すると共に(勝手に翻訳でゴメンナサイm(_)m)、N9を世に送り出してくれたMeeGoチームとその関係者に感謝の言葉を述べてこの翻訳を終了しようと思います。

では、また再び主戦場をtwitterに移します。次はLumia920買いましたのエントリで(笑)

    • pekeroppa
    • 2012年 10月 26日

    翻訳お疲れ様&ありがとうございました!。現状、そしてNokia、MeeGoに何が起こっていたのか。についてよくわかりました♪

      • palmdra
      • 2012年 10月 27日

      それは翻訳した甲斐がありました!

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