【Nokia】【Windows Phone】Nokiaに待ち受ける困難

Nokiaの発表した新戦略ですが、これまではエロップCEOの発表やプレスリリースの内容を調べ、なるべくその詳細を伝える努力をしてきたつもりです。エロップ氏はNokiaの状況を燃え盛る北海油田に例えて危機感を表明しましたが、冬の北海に飛び込むリスクも当然ある訳です。それでもやらなくてはならないというのが今回の決断であると思っています。

今回の目的が新しいエコシステムの構築にあることは間違いないですが、それを支える一つの要素としてWindowsPhone採用があります。単純にサポートOSを一つ増やすような事ではなく、今後の主力OSに据え、現在の主力OSであるSymbianをフェードアウトさせようというものです。Symbianは昨年1億台を越える出荷を行っており、決して弱いプラットフォームではありません。しかし、ライバル達の進化に遅れを取り、特にハイエンドの分野でブランドイメージを著しく落としているのが問題なのです。
そこでMeeGoやSymbianのユーザエクスペリエンスを改善し、Qtという共通の開発環境を利用して魅力的なアプリケーションプラットフォームに育て、新たなエコシステム構築するというのがNokiaの戦略でした。多くの人がエロップ氏が強力なリーダーシップを発揮してこの計画を推進してくれると思っていたはずです。
結果としてはエロップ氏はMicrosoftとの戦略的提携を選び、Symbianは将来的フェードアウト、MeeGoは次世代のプラットフォームとして開発は続けられるものの大きく規模を縮小される事となりそうです。
関係各所の反応は様々ですが特に開発者の落胆は大きく、社員の間からも不満の声が上がっています。
当然、大きな改革を行おうとすれば強い抵抗が湧き上がるのは当然の事ながら、もう少し上手な対応が出来なかったのかと思うことも確かです。エロップ氏は今後難しい舵取りを行わざるを得ないのでしょうが、決定を下した以上は成功を勝ち取りNokiaを再び真の業界リーダーに導いてもらいたいものです。
その為にはクリアすべき問題が数多くあります。特にWindowsPhoneは改善すべき問題が数多くあるでしょう。
私はWindowsPhoneに要求される改善点は以下のようなもになると考えています。

・電話としてNokiaの既存のデバイスと同等にする。
WindowsPhoneはiPhoneを非常に強く意識したデバイスであり、UIこそオリジナリティを感じさせるものになりましたが、デバイスの成り立ちやターゲットとする市場は非常に似通ったものです。
つまり、インターネットアプライアンスマシンやマルチメディアプレイヤーとしての性能が重視されており、これをNokiaらしく電話機として使いやすく、バッテリの持ちなども良くしなければなりません。
Nokiaのデバイスはその出荷台数を背景にカスタムチップなどを利用してハードとソフト両方のチューニングを行うことでその持続力を実現すると言われています。WindowsPhoneがこうしたNokiaの事情を考慮している訳もなく、独自のチューニングを施す必要があるでしょう。
また、電話機としての使い勝手は独自の電話ソフト(ダイヤラー)を載せるかもしれないですね。

・WindowsPhoneをローエンドまで対応するワイドレンジなOSにする。
現状のWindowsPhoneは1GHzのCPU、512MBのRAMなどハードウェアの要求水準が高く、事実上ハイエンドのみをターゲットとしたOSです。Symbianは$200から$600までワイドレンジでデバイスをカバーするOSです。Nokiaは他のベンダーと違いOSを改変する権利を得ているそうですが、現在のSymbianの様な$200クラスまでカバーするOSにするにはかなりの改良を施す必要があるでしょう。アプリ互換性を維持しながら小型デバイスや低解像度液晶に対応したり少ないメモリや遅いCPUでも快適に動かす為にはかなりの改良が必要に思われます。
具体的なタイムスケジュールまで入ったSymbianからWindowsPhoneへの移行スケジュールが発表されましたが、5年という長い期間を経て完全移行する背景にはこうしたOS改良の難しさが現れていると思います。
・様々なフォームファクタやバリエーションへの対応
現状のNokiaのスマートフォンラインナップはフルタッチやフルキーボード、テンキースタイルにタブレット型やキャンディバースタイルにスライド型など様々フォームファクタが存在するのに併せてN、E、X、 Cなど用途に合わせたカテゴライズ分けも行われており差別化はソフトウェアにまで及んでいます。こうした差別化の為に独自のアプリケーションの開発なども行われなくてはならないでしょう。
・消費者の信頼の回復
WindowsPhoneはSamsung、LG、HTCというスマートフォンのエクセレントカンパニーが参加したにも係わらず、昨年のクリスマスシーズンの売れ行きは期待外れなものでした。出荷数は200万台程度、これはNokiaの中でもN8ほども売れていません。(N8は300万台とも400万台とも言われています。)また実際売れたのは50万台程度という事で倉庫に在庫が積み重なっているなんていう噂もあります。実際のところ不人気なプラットフォームと言っても差し支えないでしょう。リサーチを行ったところ過去のMicrosoftのモバイルデバイスのイメージからかなりの不信感を消費者が持っている事は確かな様です。不具合と出来の悪い内蔵ソフトウェア、消費者の信頼はかなり低下しており、実際それはシェアという形で表れてしまっています。
これを払拭するためには、まずは良い物作りしかないと思います。それと的確なプロモーション。資源を集中してデバイスを絞り込みブランドイメージを高めるような的確なプロモーションが必要でしょう。

1億5,000万台のスマートフォンを売るというのは非常に困難な挑戦です。ただし、今のところそれが出来るメーカはNokiaしかいません。ただし、それをWindowsPhoneで行うには上記の方法を着実に実行していくしかありません。そして、モア・スピード!スピード感の無さからMeeGoを諦め、Symbianを退役させるのですから今年中にWindowsPhoneをなんとか出荷するなって事では無く、NokiaWorldでWindowsPhoneが3、4台発売できたと発表できるようになって欲しいものです。

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