【Books】世界自動車戦争論1 ブランドの世紀

私が敬愛する自動車評論家福野礼一郎氏の最新の著書です。
今から10年ほど前の自動車雑誌(Tipo)のコラムですが
「戦闘機の操縦桿は手元を見なくても15種類の操作が出来る。携帯電話はたかだか電話をかけるくらいの事で、なんでこんなに面倒な操作が必要なのだ。」
操作が何種類だったか正確には憶えていませんが、内容的には違っていないと思います。携帯電話のユーザインタフェイスに言及する人などほとんど居なかった当時の話です。氏が如何に鋭い洞察力と問題意識を持ち合わせていたか分かろうと言うものです。
で本の本題は”如何にしてブランドはカタチを作り、カタチはブランドにイメージを与えるか”というもの。(雑誌連載時の題名)
氏はブランドとしてNISSAN GT-Rを評価します。エンジニアの主張、エゴ、ドグマ、スタイリングの演出それらがブランドを形作るのだと。GT-Rは決してスタイリングの良い車とは言えません。逆にこの手のスーパースポーツとしてはかなり残念なダサイスタイリングといえるでしょう。ガンダム的な子供っぽいスタイリングです。しかし一方で誰もがスカイラインだと分かるスタイリングです。あの第1回日本グランプリでポルシェを追い回したというあの伝説はやはりこのスタイリングなのです。(まあ当時は箱でしたが、でも丸目のテールランプなどそのイコンを至るところに見つけられるはずです。)
ブランドとはそういうものであり、売りは万人媚びない走りを追及したこの性能なのです。顧客のクレームを恐れひたすら、お客様の意見に耳を傾け80点主義で作られたものはもはやブランド足りえないのです。それが無ければ単に安売り競争に身を置くしかないということです。安売り競争で中国に勝てるかそう言えば分かってもらえると思います。
ここまで書いて気付いた人もいるでしょう、これって携帯電話も同じじゃないの?と。
日本の携帯は世界で勝てない、それは日本が独自の通信方式を取って来たから?それも当然あるでしょう。
でもそれなら日本と同じくGSMを採用しなかったサムスンやLGの成功をどうみたらいいのでしょう。
それは日本メーカがブランドでは無いからです。サムスンの様に資源を集中し、過剰な高性能と豊富な宣伝費でブランド力を高めるものもあれば、LGのようにPRADAの様なブランドと結び付けたり、自社内にchocoやshineというプレミアブランドを作るものもあります。
NOKIAは圧しも押されぬブランドだし、Sony Ericsson既に確立された親会社のブランドWalkmanやCyber-shotを持ちます。既に日本が数千円で売られる低価格携帯でシェアを持つことは出来ないことは自明の理です。日本メーカが戦うとしたらハイエンドの世界、ブランドが物をいう世界なのです。
日本の携帯が世界で最も高性能というなら、機能で勝負すればいい、デバイスもソフトウェアも最高のもの使ってぶっちぎりの高性能な携帯を投入すればいい。
山根師匠によればソフトバンク920SHと同等のSX862は非常に注目を集めているらしい。日本から1周遅れの携帯をいつも通りの合議制で無難に造って安くていいものなら売れるの旧来の考えでは勝ち目は無いのです。
これからは動画、GPS、RFID(おサイフケータイのアレね。)というアイテムが重要になってくると思います。これらは現在のトレンドGoogleのサービスを携帯電話に取り込むと言うものと深い関連性があります。これらの対応も使用されているデバイスでは日本携帯は全く問題がありません。端末性能という面なら全く海外製携帯に引けを取るところはないのです。
問題はスタイリングです。日本携帯は強烈な個性に欠ける無国籍風です。それならとことんギミックに拘ったクール路線に行くという手もあるのではないでしょうか。SHARPのSX862はサイクロイド液晶のギミックがありますが、この分野では強みを発揮すると思われている韓国勢が意外と市場に送り出していません。世界のトレンドが薄型や小型化に行っているのかもしれませんが十分勝負は可能ではないでしょうか。変形合体ロボは日本の得意とするところです。外部からデザイナを招いてもいいと思います。マクロスの河森正治を連れて来てもいいじゃないですか、実際彼は工業デザインということならAIBOを手掛けたりしています。ハリウッドにもパクられる様な才能を携帯に取り込んだって良いはずです。子供っぽいと言われようが、誰も真似できないような超絶ギミック携帯で世界と勝負するなんてのも個性の発揮しにくい日本携帯にはありなはずです。
汎用液晶の様な1.5線級のデバイスを使ったNOKIAの諸いブランドビジネスに何時までも独走を許していいのか、日本のカメラモジュールや半導体デバイスなどの優れたパーツは韓国メーカのために存在するのでいいのか?日本メーカには奮起をお願いしたいのです。

て、車の話全然出てこねーし。(笑)本自体は、自動車好きの方なら非常に楽しめるものになっています。お勧めですよ!

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  • コメント (2)
    • Ling-mu
    • 2008年 6月 3日

    日本のパーツメーカーはNokiaにも結構納めていたはずです。
    Nokiaが日本撤退後もNokia Japanが残っていた理由の一つに世界最先端の携帯電話パーツが入手できるからというのもあったと思われます。
    そういえばN93とかに搭載されていた光学部品も日本製だったと聞いたことがあります。

    とはいえ最近のNokiaの組織変更の一環で日本の研究部門が無くなってしまったらしいのは結構ショックです。ドイツでは丸ごと無くなってしまうということで政府を巻き込んで大騒ぎになりましたが、日本では一部門の閉鎖ということもあり特に騒ぎにはなりませんでしたね。英語のプレスリリースには今後残る研究部門の中に日本が含まれていないだけで、特に閉鎖とは書いてなかったとは思いますが、マスコミが取り上げてもよかったんじゃないかと思いました。
    開発部門は残っているみたいですけど、R&DのRの部分を日本においておくメリットをNokiaが感じなくなってしまっている雰囲気が出ていてなんかアレです。

    • ピードラ
    • 2008年 6月 3日

    ソフトウェアに軸足を移すNOKIAの合理化の一つということで考えたいけど、日本のプレゼンス自体が著しく落ちているということでしょうね。残念なことです。
    富士通からソフトウェア技術で提携みたいな話も有ったけど、必要なものは買ってくればいいやということなのでしょうね。Felica(日本独自のものに限っては)だの指紋認証などは別に自社技術として持つ必要は無いということでしょうか。
    4Gで先行なんて言われていますが、DoCoMoの研究所との協力ももはやあまりメリットが感じられないのでしょうかね。

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